……四弘誓願を、太子は母の胎内にいる時に唱えたというのです。
衆生無辺誓願度 煩悩無量誓願断 法門無尽誓願学 仏道無上誓願成

この四句は菩薩の誓願です。すべての衆生をさとりの彼岸に度し、すべての煩悩を断ち、すべての仏の教えを学び知り、無上のさとりを成就するという誓いです。確かに太子の生き方は四弘誓願のとおりであり、人々は生まれる前から太子は誓願をしてこの世にやってきたのだと考えたのです。このようなことをいわれても、太子自身はゆったりと微笑をなさっているばかりです。(本文より)

【目次】

  序 章 時の流れ
  一 章 騒乱の幕開け
  二 章 激しい風
  三 章 帝の座
  四 章 菩薩の仏国土
  五 章 師の言葉
  六 章 一輪の蓮の花
  七 章 二人の菩薩
  八 章 国の基・十七条憲法
  九 章 観音化身上宮太子
  十 章 日出ずる処の天子
  十一章 夢殿の太子
  十二章 世間虚仮、唯仏是真
  十三章 無量の光明
  終 章 時は過ぎ去るもの 

【著者略歴】
立松和平(たてまつ わへい)
1947年栃木県宇都宮市生まれ。早稲田大学政経学部卒業。在学中に『自転車』で早稲田文学新人賞。インド放浪を経て、宇都宮市役所に勤務。79年から作家活動に専念。80年『遠雷』で野間文芸新人賞、97年『毒一風聞・田中政三』で毎日出版文化賞受賞。2002年には歌舞伎座上演『道元の月』の台本で、第31回大谷竹治郎章受賞。自然と旅を愛する行動派作家としても知られ、小説、エッセイ、絵本など著作多数。