| あなたの干支の守護仏と梵字 |
| 大正大学教授 小峰彌彦(こみね・みちひこ) |
| (2005年『大法輪』3月号より抜粋) |
| 密教では大日如来が教主であるが、寺院での本尊は必ず大日如来とするのではなく、如何なる尊格をお祀りしても自由であり一定していないのが特徴である。その理由は曼荼羅に象徴されるように、大日如来は一切を統括する尊格であり、他の諸仏・菩薩は大日如来の個別な働きを司る役割を担う、という役割分担の関係があることによる。教理学的に言えば、大日如来を普門の総徳、他の仏・菩薩を一門別徳の本尊とするのである。 十人十色といわれるように、人々の願い思いはそれぞれに異なることから、自分の求めにあった仏・菩薩を選び取るほうがより信仰が得やすくなる。たとえば不動明王から虚空蔵菩薩までの十三仏信仰などがその一例である。またこれらの仏・菩薩と縁の深い日を設定してお詣りする、いわゆる縁日詣りなども作られるようになる。さらには生まれ年の十二支に合わせその人の運勢を守護する本尊を定め、その本尊を祀る寺院へ参詣するという信仰が生まれ、具体的には除災招福・身体健全・商売繁昌などの現世利益を願ったのである。 十二支と守護仏の関係は以下の通りである。 @子―千手観音 A丑・寅―虚空蔵菩薩 B卯―文殊菩薩 C辰・巳―普賢菩薩 D午―勢至菩薩 E未・申―大日如来 F酉―不動明王 G戌・亥―阿弥陀如来 |
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子歳 千手観音 千手千眼観自在菩薩というように、この尊は千の手、千の眼を持っている。千という数は無数という意味であることから、千の眼と手は量り知れない数の人々に慈悲のまなざしを向け、いかなる人をもすくい取ろうとする深い慈悲の心を表現している。また二十七もの尊顔は、地獄から天界までのあらゆる世界を見通し衆生救済の余すことのないことを願う姿を示している。 真言は、オン バザラ タラマ キリク(オーン 金剛法よ フリーヒ)、種字はキリクである。千手千眼の名の通りその力は救済を願うあらゆる人々に及ぶとされ、除災招福・家内安全・息災延命・良縁成就などのような幅広いご利益があると信仰されている。 |
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丑・寅歳 虚空蔵菩薩 虚空という名の通り、この尊は大空のように無尽の智徳と福徳を蔵している菩薩という意味を持つ。智徳とは智慧の徳という精神性が勝れた功徳を意味し、福徳は現実世界における具体的な実践の徳を示している。太陽の光や雨が私たちに限りない恩恵を与えてくれるように、その智徳・福徳の功徳が、信仰する人々に絶えず降り注いでいることが示されている。 真言は、ノウボウ アキャシャギャラバヤ オン アリキャ マリボリ ソワカ(虚空蔵に帰依し奉る オーン 怨敵を討ち滅ぼすものよ スヴァーハー)、種字はタラクである。諸願成就・学業成就・事業繁栄・息災延命など様々な現世利益がある。 |
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卯歳 文殊菩薩 『大日経疏(だいにちきょうしょ)』に「文殊とは偉大なる智慧である。勝れた空(くう)の智慧をもって菩提心を浄(きよ)め、般若(はんにゃ)の利剣で煩悩(ぼんのう)を根元から断つ」とあるように、一切を見通す智慧の尊格が文殊菩薩である。正式名・文殊師利の梵名はマンジュシュリであり、種字のマンはこの頭文字である。頭髪の五つの髻は、大日如来の五智を司ることを表わしている。人間がしばしば道を誤るのは正しい見識を持たないことに起因することから、文殊菩薩を信仰することで叡智が得られることが示されている。 真言は、オン アラハシャノウ(オーン アラパチャナ尊よ)、種字はマンである。ご利益は災厄消除・諸魔退散・学業成就・合格祈願など。 |
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辰・巳歳 普賢菩薩 普とは普(あま)ねく行き亘(わた)ることで、賢はすぐれて善いという意味である。すなわち普賢菩薩は菩提心が身・口・意のすべてに働いていることを意味している。普賢菩薩は文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍となっているように大乗仏教を代表する菩薩である。文殊の智慧に対し、普賢は実践に勝れたことを示し、たとえば六波羅蜜の理想を成しとげた尊格として崇められる。 真言は、オン サンマヤ サトバン(オーン 汝は三昧耶(さんまや)なり)、種字はアンである。なお、三昧耶には誓願・教え・覚知など多種の意味が込められている。ご利益は家内安全・学業成就・除災招福など。 |
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午歳 勢至菩薩 この菩薩は聖観音とともに阿弥陀如来の脇侍ともなっているように、大乗仏教の代表的な尊である。得大勢とも称されるように、大悲心の勢力が勇躍し、人々の求めに応じて自在に働き出ることを示す尊格である。 真言は、オン サン ザン ザン サク ソワカ(オーン サン ジャン ジャン サハ スヴァーハー)である。このうちサンは大空、ザンは生、サクは堅固、を意味する言葉である。すなわちこの真言は煩悩を離れて大いなる空の境地を堅持することを示している。種字のサクは真言の一字である。 ご利益は、家内安全・除災招福・事業繁栄などである。 |
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未・申歳 大日如来 密教の教主で曼荼羅(まんだら)の中心に尊座し、如来の中の如来と位置づけられる尊格である。この尊は個別的な働きを示すのではなく、曼荼羅全体を包含する全体的な働きを有する尊格である。 真言のアビラウンケンバザラダドバンは、胎蔵(たいぞう)大日如来の真言の「オン アビラウンケン(オーン 勇者よ ウン カン)」と金剛界大日如来の真言の「オン バザラダドバン(オーン 金剛界よ ヴァン)」の二つの真言を合わせたものである。胎蔵大日如来の種字はアであり、金剛界大日如来の種字はヴァンである。 ご利益は大日如来の尊格からして一切に及ぶので、息災・敬愛・増益・降伏(ごうふく)の全てに亘っている。 |
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酉歳 不動明王 不動とは動かざるものの意味で、菩提心が堅固で揺るぎのない智慧を有していることを示している。大日如来の使者として現実世界に遣(つか)わされ、特に悪に対しては真っ向から立ち向かう強い意志を持つ尊である。怒りを顕(あら)わにした尊形は、心は慈悲であっても悪は許さない姿勢を表現している。温かい心と意志の強さが示されている。 真言は、ノウマク サマンダバザラダン センダマカロシャダ ソワタヤ ウン タラタ カン マン(普き金剛諸尊に帰命す。威猛なる大忿怒(ふんぬ)尊よ うち砕け フーン トラット ハーン マーン)、種字はカンである。ご利益は除災招福・諸魔退散・事業繁栄などである。 |
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戌・亥歳 阿弥陀如来 無量寿あるいは無量光とも称されるように、阿弥陀如来は永遠の生命を持ち限りない光明を人々に注ぐ尊格である。悪の限りを尽くしたものをも救済しようと願う、慈悲を代表する尊格である。 真言は、オン アミリタ テイセイ カラ ウン(オーン 甘露の威光あるものよ〔不死を〕もたらせ フーン)、種字はキリクである。 キリクには貧(とん)・瞋(じん)・痴(ち)の三毒と涅槃の意味があるとする。つまり阿弥陀如来は、これらの煩悩の苦しみを滅し、涅槃に導いてくれる仏と意義づけるのである。 ご利益は家内安全・息災延命など個々の幸福と、人々の安全に関するもの一般である。 |
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